~変革型リーダーが輩出される仕組み~
背景
中国でグループ会社を数十社を持つメーカー。中国進出当時は技術の優位性で順調に業務を伸ばしてきたが、地場会社が追いつく現在では新たな優位性の構築が迫られる。また、グループ各社の垣根を越えて全社横断的に相互連携し、グループのシナジー効果が期待されている。
すでにグローバルの各リージョンで導入しているアクションラーニングの中国での実施を企画し、グループ会社の部課長を選抜し、変革型リーダーを育成するプロジェクトを展開したい。
アクションラーニングから輩出されるグループ会社の中堅人材がコミュニティに配属し、コミュニティは各自グループ横断型課題を持ち、参加者が継続的に経営環境の変化に応じて、施策検討を取り組んでもらいたい。
参加者
グループ会社の部課長約15~20名(毎年)。
内容
当該リーダーシッププロジェクトは、すでに5年間実施している。毎年の設計は参加者により少し調整するが、知識のインプットよりは、参加者の所有能力以上の課題を与え、踏ん張って課題解決をしてもらうことに重点を置く。そのプロセスの中で、自分達の視野の狭さや視点の低さに気づき、一皮抜ける経験をしてもらう、というコンセプトで実施する。
5名×3グループまたは4グループに分け、それぞれ課題を決め、取り組んでもらう。コンサルタントは集中講義をしながら、グループごとに課題指導する。各グループが取り組み内容をレポートにまとめ、経営陣の前で発表する流れとなる。
成果
アクションラーニングの中で、参加者によるグループ横断的課題が複数検討された。それらから継続的取り組む必要がある課題が選ばれ、6つのエリアコミュニティが成立された。50名以上の卒業生が所属企業の仕事以外に、自主的にコミュニティ活動の課題を推進している。中国のその活動実績が本社から高く評価されている。
提案が経営者に承認され、「私たちができる」とオーナーシップとチェンジマインドが上がった。グループが変れることと実感しながら、「私たちでできる小さい一歩」を考えるようになった。
事務局所感
幹部人材教育プログラムの事務局として、プログラムにアクションラーニングを導入しました。5年前から幹部人材育成プログラムを実施し始め、弊社グループの各子会社から100名近くの人材が推薦されて参加して来ました。将来の中華圏事業の中核事業を担う人材を発掘することができ、アクションラーニングによって変身を遂げた参加者の続出で驚きました。
このような変身は、従来の座学では難しいが、アクションラーニングやその後の委員会活動では、コーチからシビアな質問、メンバー間の刺激や啓発、活動発表後の各関係者のコメント、参加者の反応など、玉ねぎを摘むような連鎖反応で、これまで気づかなかった受講者の心の奥のものが明確に提示されることになりました。
それで受講者のマインドセットが変化し始まりました。このような変化は、プログラム期間中だけでなく、プログラムが終了後、受講者を通じて彼らが所属している各子会社に持ち帰られ、グループ全体の組織力の強化につながり、一連の組織変革をもたらしています。
フィードバック
私は品質管理のプロとして自負しています。アクションラーニングに参加してみると、課題を取り組む中で、自分の専門知識だけでは関係者を納得させることができないことが多々ありました。私にとっての足りないのは、知識やスキルではなく、正解が見えないときに関係者と議論する力であることがわかりました。技術者から脱皮して、いろんな人と協力し合い、最終的に問題解決のための“共創”することが大きい学びとなりました。
アクションラーニングに参加する前は、日本側から派遣された駐在員に対して不満がありました。例えば、“ここがおかしい”と何度も伝えていたのに、なぜ駐在員は対応してくれないのか。アクションラーニングして、当初“伝えたのに、彼らが解決しない”と常に言う自分は、失敗をどんだけ恐れていたと気づきました。"できる、やってみる”と考え、自ら最初の一歩を踏み出せばよいですね。
コンサルタント所感
在中日系企業によく見られる事例です。経営人材現地化の推進に努めるが、諸事情により、日本人駐在員が主体となるマネジメント体制を踏襲する組織がまだ多いです。現地社員にしてみれば、どうせ本気で任されることはないと考え、ネガティブ感を持って研修に参加することも多々あります。
当該組織は、中国のみならず、欧州や米国においても、アクションラーニングを実施して豊かな経験を持っています。形上の“お勉強”ではなく、参加者がより高い目線を持つようにマインドチェンジし、変革を実践できるプログラムを目指します。
そういった“押し付けない、内なる変化を促す”苦心が参加者に理解されていきます。試行錯誤ができる舞台で、自分が最適解を探して、これまでルーティングワークでは得られない手ごたえを感じられます。結果として、アクションラーニングやコミュニティといった、一見“負担”になるような活動に情熱をもって継続的な取り組み、自分達が組織を変えていく意気込みにつながりました。
本社でも、中国の取り組みは高評され、役員から“皆さんはなぜそこまでモチベーション高くコミットしているですか”と聞かれるほどの存在になりました。グローバル進出する日本企業の人材現地化には、大変参考になる事例だと思われます。
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