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組織開発

Image by Danil Shostak
ナレッジ: ようこそ

組織の自ら成長を目指す“組織開発”

最近、耳に入るようになった組織開発という言葉、一体どういうことなのか。ウィキペディアによれば:


Organization development (OD) is the study and implementation of practices, systems, and techniques that affect organizational change. The goal of which is to modify a group's/organization's performance and/or culture. The organizational changes are typically initiated by the group's stakeholders.

OD emerged from human relations studies in the 1930s, during which psychologists realized that organizational structures and processes influence worker behavior and motivation. Organization Development allows businesses to construct and maintain a brand new preferred state for the whole agency.

Key concepts of OD theory include: organizational climate (the mood or unique “personality” of an organization, which includes attitudes and beliefs that influence members' collective behavior), organizational culture (the deeply-seated norms, values, and behaviors that members share) and organizational strategies (how an organization identifies problems, plans action, negotiates change and evaluates progress).


日本語に直すと、下記のようになる。


組織開発(OD)とは、組織の変革に影響を与える実践、仕組みやテクニックを研究し、実施すること。その目標は、組織のパフォーマンスまたは文化を修正すること。組織変革は普通グループのステークホルダーによって始められる。


ODは1930年代の人間関係の研究から始まる。その中で、心理学者は組織の構造やプロセスが労働者の行動やモチベーションに影響を与えることに気づいた。組織開発は組織全体にとってより好ましい状態を構築し、維持することにつながる。


OD理論の主要な概念は以下を含む:組織風土(メンバーの集団行動に影響を与える態度や信念を含む組織の雰囲気または独自の「個性」)、組織文化(メンバーが共有する深く根付いた規範、価値、行動)、組織戦略(組織が問題を特定し、行動を計画し、変化を交渉し、進捗を評価する方法)。


そのようなことはどこの会社でも人事部門などでやっているではないかと思う。なぜ、今組織開発なのか?人事部門の諸施策との違いは何か?


様々な考える切り口があるだろうが、時代の変化が組織開発という手段をより効果的にしているかもしれない。


かつて安定した環境の中では、トップや企画部門が組織の方向性や実行計画を考え、組織がそれら実行する。人事部門はヒューマンリソースと呼ばれるように、それらが実現できるように、組織図に当てはまる人的資源をマネジメントする。組織で働く人材は、組織図の一部の役割を担い、その役割に対するパフォーマンスを出す。


つまり、全体から個別にブレイクダウンするアプローチである。機械のイメージが先にできて、必要な部品を合わせていく。


しかし、最近では、ビジネスサイクルの急速な短縮化と知識の更新スピードの高まり、経営環境の複雑化という形で企業に大きな影響を与えている。「この5年は策定した中期計画通りの経営になる」と自信をもって断言する会社が少ないだろう。それよりも、環境の変化に対応してアジャイルに対応する組織力が求められる。つまり、機械そのもののイメージが変わる前提で部品の組み方を考えなければいけなくなる。こういう時に、部品と部品の関係性を調整して全体を作り上げる組織開発という柔軟的に対応がより時代に合う考えになっていると思われる。


そう考えると、これまでの人材開発と組織開発の考えの違いがきれいに見分けられる。人事の世界で、経営の設計図通りに、部品の仕様をジョブディスクリプション(JD)に落とし、研修を行い、部品の役割を担う人材がより設計仕様に近づけるように取り組む。「部品の品質が高まれば、全体がよくなる」という足し算のような考え方になる。


一方、組織開発は個別部品の品質向上よりは、「部品のかみ合わせを調整して機械をより効果的に回す」、ないし「状況に応じて効果的な機械を作る」ことに趣を置き、掛け算のような考え方である。環境が変わる場合、設計図ができていなくても、手持ちの部品の使い方を調整して機械を組み合わせていく。設計図に部品の仕様が記載されないがゆえに、部品の精度を上げることよりは、人材の本来の能動性をインスパイアし、最適解が見つけるよう環境を整えることにシフトする。これが変化が速い時代において、組織開発という考え方が脚光を浴びるようになる原因であろう。


設計図が変わる前提だとすれば、組織を束ねる手段はより部品より人材にアプローチをシフトしなければ、成り立たない。こういった人材の心を引き付けるためには、組織のパーパスを明確しなければアピールできない。また、ダイバーシティ&インクルージョン、エンゲージメントや働き方改革などのコンセプトが強調される背景と思われる。


もちろん、現実の世界では、組織開発に全部シフトしていければよいというな単純な話ではない。業界や規模など様々な要素を考慮し、組織の身の丈に合った動かし方を模索する。ただ、その中で、従来の施策では上手く機能しない時に、ほかのアプローチでトライしてみてもありだという考えができれば、行き詰まり状態から脱出できるかもしれない。


例えば、日本企業のグローバル化に伴い、駐在員のパフォーマンス向上というものが重要なテーマになる。これまでの人材開発の手段としては、英語力を高める、または異文化コミュニケーションやローカル文化を知るような研修を行い、駐在員という部品がより仕様に近づくことにフォーカスする。一方、駐在員があるべきを理解できても、プレーイングマネジャーになって部下が育たないという課題が依然と続く。


その時には、「駐在員という部品の精度を上げる」よりは、「駐在員とローカルスタッフの組み合わせ方を変える」仮説を立ててアプローチすると、新天地が開かれるかもしれない。


例えば、相互が期待する役割認識が擦りあっていない、または、信頼関係が築いていない、といった切口が現れる。そうすると、関係者を集めて、ありたい姿に対する目線合わせや相互理解が深まるように対話の場を作る。そこで得る気づきをアクションに落とし、新しい組み方の実験を展開していく。


当然、「駐在員とローカルスタッフの組み合わせ方を変える」ではなく、「ローカル法人と本社の組み方を変える」ような仮説を立てれば、組織レベルの部品の関係性調整の話になり、組織戦略につながる。


ここまで読むと、なんとか考え方としてわかった気がするけど、方法論が見ないことであろう。実際、社会学、心理学、特に産業・組織心理学、およびモチベーション、ラーニング、パーソナリティやシステム思考など集合体となるので、特にこれという方法論がまとめにくい。


組織変革の分野で指導的立場にあるコロンビア大学のバーク氏の言葉を借りれば、「組織開発コンサルタントになるには何が必要か、とよく聞かれるが、この質問は実に答えにくい。組織開発コンサルタントになるための明確で体系的な道筋は存在しないからだ。経験こそが組織開発実務の最良の教師である。」


というように、事例をたくさん見て、専門家と相談して、所属する組織で小さい一歩をトライしてみることを勧めたい。

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プロセス
コンサルティング

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クライアントをサポートする技術としてのプロセス・コンサルテーション

プロセス・コンサルテーションとは、アメリカの組織心理学者であり組織開発コンサルタントであるエドガー・H・シャインによってに提唱された、組織開発コンサルタントによる支援のし方のモデルである。


プロセスコンサルティングでは、一人の経営専門家が既成の解決策を提示するのではなく、コンサルタントとクライアントが診断から実施まで参加型プロセスで、当該クライアントのシステム組織に具体的に適用する解決策を見出すものとする。


このように、相互参加と固有性を重視したプロセスコンサルタント手法は、強力な経営コンサルティング・ツールとなる。


コンサルタントの役割を一言で言うと、「クライアントに対し、課題の発見・解決を通じてその発展を支援すること」だが、根本的な考え方やスタンスの違いによって大きく3つのタイプに分類することができる。


(1) 専門家モデル


(2) 医師と患者の関係モデル


(3) プロセスコンサルティング モデル


最初の2つのモデルは、「コンテンツ コンサルティング」で、コンサルタントが「人に魚を上げる」こととなる。


クライアントが自分の問題やニーズを明確に定義し(専門家モデル)、あるいは診断と処方の全権をコンサルタントに委任し(患者・医師モデル)、コンサルタントが解決策を提示し、それをクライアントが受け入れて実行し、実行後の結果を負担する、というものである。


問題は、クライアントは何が本当の問題なのかを知らないことが多い。例え、「うちは明確な戦略がないので、明確にしたい」と考えるときには、実は組織の中で部門間のコンフリクトが多くて、協働関係を持って戦略を実行できる組織能力がなかったりする。


「若手の営業力が低いので、スキル研修を導入したい」と考えるときには、実は昔ながらの営業スタイルが主流となる組織の中で、若手こそが環境とのギャップを感じてやりにくい。または、ヒエラルキーな組織風土の中で、若手が働き甲斐を感じないからパフォーマンスが悪い、等々の状況が考えられる。


また、外部のコンサルタントは、クライアント自身と同じように業務に完全に関与することができないため、問題の「全体像」を理解し、クライアントが本当に解決できるような解決策を提示することができるものだと考えにくい。


それらと対比して、3つ目のモデルは、「プロセス コンサルティング」で、コンサルタントが「人と一緒に魚を釣る」こととなる。


このモデルの核となる前提は、クライアントが共同診断に参加し、解決策の開発に参加することで、クライアント自身が問題を診断し解決することを学ばなければならないということである。と同時に、問題はより徹底的に解決され、クライアントは新たな問題に対処するスキルを獲得することができる。


プロセスコンサルティングのモデルでは、クライアントは何が問題なのかを正確に知る必要はなく、もやもやしてもっとよいやり方もあるのではないか(問題が存在することを認識し、それを変えようとする)と考えるだけで良い。


上記のまとめとして、プロセスコンサルティングの完全な定義は、「望ましい変化を実現するために、コンサルタントがクライアントの組織環境における出来事に関する情報を認識し、理解し、行動することを支援する一連の活動」としてよいであろう。

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